教育

暗号史~古典暗号・近代暗号・現代暗号~

あなたが携帯電話を使って家族や友人と電話をしている時、その通話の内容が全て暗号化されているって知っていましたか?

暗号化とは次のような意味を持ちます。

暗号化:《encryption》文章や電子データの情報を一定の規則に従って組み替え、通信途中に第三者に利用されないようにすること。[goo辞書より引用]

電話が暗号化されていることによって、たとえあなたの電話が誰かに盗聴されたとしても通話内容の解読はほぼ不可能です。

電話以外でも、例えばインターネットショッピングやSNSが安全に行えるのも、あなたが入力したクレジットカードの情報やあなたの個人情報が暗号化され送信されているからに他なりません。

この時代を生きているのであれば、おそらく誰もが一日に一度は暗号化を行っているはずです。そんな現代の必須技術である暗号ですが、実はその歴史は紀元前まで遡ります。

今回は暗号の歴史について、順を追って見ていきましょう。

暗号の歴史を学ぶ前に、まず暗号の分類について触れる必要があります。暗号には様々な種類がありますが、現存する暗号は大きく「古典暗号」と「現代暗号」に分けることができます。

古典暗号

古典暗号とは、次の特徴を持つ暗号の総称です。

  • 暗号アルゴリズムと鍵を秘匿する
  • 暗号の安全性を言語の統計的特徴を基に議論する(頻度分析など)
  • 暗号を使用する目的が主に軍事と外交

例えば、後述する換字式暗号転置式暗号などがそうです。古典暗号のアルゴリズムを作るということは、一種の芸術のようなものであり、数学的な安全性評価というものがありません。

現代暗号

現代暗号とは、次の特徴を持つ暗号の総称です。

  • 暗号アルゴリズムは公開され、鍵のみを秘匿
  • 暗号の安全性は計算量を基に議論する
  • 一般社会において民間・個人にも使われる

例えば、対象暗号(共通鍵暗号)非対称暗号(公開鍵暗号)などが含まれます。こちらについても後述します。

現代暗号以前の、アルゴリズムを秘匿し一部の者だけが使っていたような暗号は総じて古典暗号に分類されますが、古典暗号でも紙と鉛筆と多少の道具のみを使用していた暗号と、機械を使って暗号化を行う機械式暗号を区別して、後者を近代暗号とすることもあります。

古典暗号

ヒエログリフ(Hieroglyph)

紀元前19世紀頃の古代エジプトの石碑に描かれているヒエログリフ(神聖文字)には、文書中に標準以外のヒエログリフを用いたものがあり、歴史に残る最古の暗号文といわれています。

アトバシュ暗号(Atbash)

紀元前5世紀頃の旧約聖書の中にも暗号が使われていました。その一つがヘブライ語の単一換字式暗号であるアトバシュ暗号です。この暗号は文字に番号をつけて、最初からの順番と末尾からの順番を入れ替えて作ります。アルファベット26文字を暗号化する場合は、AをZに、BをYに、というように順番を置き換えて作ります。

例えば「MISTY」をアトバシュ暗号にすると、「M」はアルファベットの最初から13番目なので、これを末尾から13番目の「N」に換えます。以下同様に変換すると「MISTY」は「NRHGB」と意味を成さない言葉になります。

アトバシュ暗号は映画「ダヴィンチ・コード」で使用されたことで有名です。

スキュタレー暗号(Scytale)

アトバシュ暗号と同じく、紀元前5世紀には古代ギリシャの都市国家スパルタでスキュタレー暗号が用いられました。スキュタレー(ギリシャ語でバトン、棒の意)と革紐を使った暗号方式で、革紐上には一見ランダムな文字列が書かれていますが、この革紐をスキュタレーに巻き付けるとある行に平文が現れます。

スキュタレー

受け手が同じ太さのスキュタレーに革紐を巻き付けると複合できるという仕組みになっています。前述しましたが、このように文字を読む順番を並び替えることによって暗号化する方式を転置式暗号といいます。

ポリュビオスの暗号表(Polybius square,Polybius checkerboard)

紀元前2世紀、古代ギリシャの政治家・軍人・歴史家で暗号にも大きな関心を持っていたポリュビオスは、文字を数字に変換する単一換字式暗号であるポリュビオス暗号を発明しました。

ポリュビオスの暗号表

この暗号は、5×5=25のマス目にアルファベットを記入(アルファベットは26文字なのでIとJは同じマスに入れることが多い)した表を使って、1つのアルファベットを2桁の数字の座標で表すものであり、文字を数字で表すという発想は記号に乱数を加えることを可能にする画期的な発明でした。

シーザー暗号(Caesar cipher)

紀元前1世紀に登場したシーザー暗号は、古代ローマの独裁官ガイウス・ユリウス・カエサル(英名:ジュリアス・シーザー)が用いたとされる単一換字式暗号で、平文の各文字を辞書順に3文字分シフトして暗号文を作る暗号です。

例えばアルファベットの「A」を3文字シフトしアルファベット「D」に、「B」は3文字シフトし「E」になります。

シーザー暗号

シーザー暗号は暗号の中でもとりわけ有名なもです。文字をずらすことからシフト暗号ともいわれ、なかでも3文字シフトするものをシーザー暗号と呼ぶのが一般的です。

シフト暗号をアルファベットで用いる場合、最大26パターン試せば暗号が解読されてしまいますが、これを均等にずらすのではなく文字をランダムに並び替えれば、そのパターンは大きく増加(26×25×24×…=400,000,000,000,000,000,000,000,000通り)し、解読は飛躍的に困難になります。このような文字と文字の対応を不規則にした単一換字式暗号は、その鍵の数から解読はほぼ不可能と思われていました。

しかし、単一換字式暗号は9世紀頃アラビア人のキンディーによって、頻度分析という手法が発見されたことよにって看破されてしまいました。

ヨーロッパではその解読方面の研究は発達せず、長らく単一換字式暗号が安全な暗号として使用されていましたが、15世紀になるとルネサンスの影響を受け外交活動が活発になり、秘密を保つために頻繁に暗号が使用され始めました。その為、暗号の技術は急速に発達し、この頃にようやくヨーロッパでも頻度分析の手法が確立しました。

※頻度分析

英文の一般的な文章の場合、アルファベットを数え上げてヒストグラムを作成すると、概ねE-T-A-O…J-X-Q-Zの順で出現することが分かります(特にEが多い)。同様に2文字(連接文字)の場合、TH-HE-IN-ER、3文字の場合には、THE-AND-ING-IONなどの出現頻度が高いことが知られています。連接文字の場合、”Q”の次には必ず”U”が出現するなどの条件付きの出現頻度にも特徴がある場合もあります。

女王メアリとノーメンクラター(Nomenclator)

単一換字式暗号が頻度分析に弱いという弱点を突いて行われた暗号解読として有名なのが、16世紀のスコットランド女王メアリ・スチュワート(1542年~1587年)の件です。メアリはその共謀者とのやり取りに利用した暗号が解読されたことによって、イングランドのエリザベス女王(1533年~1603年)の暗殺を企てたとして有罪となり、処刑されました。

メアリと共謀者が使用していた暗号はノーメンクラターと呼ばれる暗号で、アルファベットを置き換える他に、フレーズを記号等に置き換える「コード(例:and→5)」を加えたものです。このコードは送り手と受け手で事前に「コードブック」を共有することによって、その暗号の解読をより困難にするものでした。

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